
●7月26日、新潟市民芸術文化会館スタジオAにおいて、「第5回岩永善信公開レッスンin新潟」が開催された(広瀬ギター教室主催)。前回までは、40名収容の会場での開催であったが、聴講生が増えたことと、より高いレベルでのレッスン展開を期待し、今回は130名収容の響きの良いホールに場所を移しての開催となった。
受講生は、笹谷聖二/ファンダンギーリョ(トゥリーナ)、児玉千鶴子/無伴奏ヴァイオリンパルティータ1番BWV1002よりサラバンデとドゥーブル(バッハ)、八木寛朝/ボッケリーニ讃歌(C=テデスコ)、関屋有史/「バラード」より第4、5番(コシュキン)、渡辺喬(Pf)/ソナタ2番第1楽章(ベートーヴェン)、渡辺勇気/ポロネーズ「英雄」(ショパン)、ソナタ15番第2楽章(ベートーヴェン)の6名。
岩永善信の音楽には感動を呼び込む“素晴らしい比率”が隠されていると感じる。それは演奏のみならずレッスンにおいても確かに存在する。この日も岩永は、それを聴講生の力量に合わせてわかりやすい言葉と表現に置き換えながら伝え、受講生の演奏をより音楽的で感動的なものに勢いよく塗り替えていった。印象的なのは、どの受講生もレッスンが始まったとたん、嬉しそうな表情に変わり、レッスン終了時には実に幸せそうな笑顔になることだ。これは「受講生本人が求めてやまないものを手に入れた喜び」の表情そのものだろう。今回は特別レッスンとして、ピアノの公開レッスンを加えたことを特筆したい。ギター音楽には接点の少ないベートーヴェンやショパンの楽曲に対しても深く鋭く切り込み、岩永の芸術家としての“幅の広さ”を垣間見る思いがした。6名の受講生それぞれに1時間ずつ公開レッスンを行い、すべてのレッスンを終えたのは夜8時半……。6時間以上もの長丁場になる公開レッスンを快く引き受け、その場に居合わせたすべての人々にメッセージを残していってくれた岩永には、心から感謝したい。高く鋭い考察力と芸術家としての真摯な姿勢、温かい人柄は、会場にいた受講生、聴講生の心に充分に伝わったことと思う。
この新潟において「岩永善信講習会」を開催することは、地元の人々の音楽意識の開眼を促し、文化的水準をより高める機会の1つとして意味があると思う。すでにその成果も出始め、良い形で新潟に定着しつつあるのは嬉しいことである。
( 主催者 広瀬恵子 )
【2008年(平成20年)<現代ギター12月号>より抜粋】
【2008年(平成20年)<現代ギター12月号>より抜粋】