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岩永善信コンサート

東京都渋谷区コンサート

◆コンサート情報

タイトル 岩永善信ギター・リサイタル
会場 ハクジュホール
〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-37-5[地図]
日時 11月19日(日) 開場14:00  開演14:30
入場料 前売:4,000円
当日:4,500円 (全席自由)
主催 アトレ企画
後援 スペイン大使館
チュニジア共和国大使館
日本アジアギター教育協会
チケット取扱先 e+ イープラス
http://eplus.jp [パソコン・携帯]
ファミリーマート[直接購入]
アトレ企画
  E-メール:okaz@mth.biglobe.ne.jp  
  Fax:03-5996-5333
お問合わせ アトレ企画
TEL:090-2522-1539
FAX:03-5996-5333
E-メール:okaz@mth.biglobe.ne.jp
チラシはこちらから≫ 表面 裏面(jpgファイルが開きます。)
コンサート写真ロゴ
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◆コンサートプログラム

◆コンサートレポート・新聞/雑誌記事・アンケート
■コンサートレポート

 定刻が近づくにつれ、客席に張られた聴衆どうしの間隔を保つためのテープが次々と外される。
今年も客席はほぼ空席なしの状況の中、11 月19 日の岩永善信ギターリサイタルは開演となった。
この日のプログラム構成はたいへん明確である。
かねてより岩永が力を注ぐ、近現代の無伴奏チェロ作品から、おそらくギター編曲は初演となるであろう重厚な2 曲の前後に、よく知られた作品や旋律の美しい親しみやすい作品を配して対比をつけ、同時に聴衆の聴きやすさに配慮するといったもの。

■その冒頭ダウランド4 曲は、力みなく自然にしかし朗々と歌われた演奏で、長調の明るい響きを中心としたものが並び、いかにもコンサート幕開けにふさわしい。
エリザベス朝の典雅な雰囲気がたちのぼる。
常に余裕を持った演奏は、最後に置かれた快速調〈ハンソン夫人のパフ〉でもけっして音を荒げることがない。

■ダウランドに続き演奏された、サントルソラの〈前奏曲〉は静謐なアルペジョの中から、印象的な旋律が浮き上がってくるたいへん美しい曲だが、多くのギタリストはこの部分に気持ちを込めすぎるあまり、感傷的なつま弾きに終わっているように思える。
岩永は、ここはむしろ自然にアッサリと通過し、その後の雄大なコラールの出現に頂点が築かれるような行き方をとっていて、他のギタリストの演奏とはスケールの大きさが違う。
神秘的な密林の奥地を辿っていくと、突如そこに壮麗な神殿が現れるとでもいったドラマチックな趣なのである。
そんなイメージが広がる演奏は初めて聴いたし、本来小品であるこの曲をこれだけ長い曲と感じたのも初めてである。
もちろん冗長という意味ではない。
感動的な時間に長く浸らせてくれたという意味である。

■続く無伴奏チェロ作品の1 曲目シベリウス〈主題と変奏〉は、哀調を帯びた旋律線と技巧の鮮やかさをほどよくあわせ持った、非常に魅力的な作品である。
変奏曲といっても夫々の変奏の音楽的性格の違いを描き分けるというより、全曲をとおしてほの暗い響きが貫かれた中に、さまざまな技巧的展開がなされていく。
岩永の演奏は、外形をバロックの〈フォリア〉〈シャコンヌ〉のように格調高く整えつつ、技巧的にはロマン派パガニーニの〈カプリス〉を思わせるさまざまなテクニックを、鮮やかに処理していく。
チェリストにとっても近年まで知られることのなかった曲だそうだが、そのような作品をさがしだしギターの弦上に響かせてくれる岩永の慧眼にはいつもながら舌を巻く。
なにより大作曲家シベリウスの作品、しかもこれだけの内容と規模をもった作品をギターのレパートリーに加えてくれたこと。
これにはすべてのギタリストは感謝すべきだと思う。

■プログラム前半の最後、横尾幸弘〈埴生の宿〉変奏曲は、小品だがけっして軽くないサントルソラ、重厚でこの日が初演のシベリウス、そのあと過度な緊張が連続しないよう、よく知られたメロディーを使った作品で聴衆に配慮した選曲だろう。
しかしながら、ここでも岩永の演奏は同じ作曲者の〈さくら〉変奏曲ほどではないが度々耳にするこの曲の他のギタリストの演奏とは、音楽性の高さと大きさがまるで違っている。
少々大袈裟に言うと、やや通俗的なはずの短調の序奏が、その前のシベリウスにひけをとらないほどに充実した深みのある音楽として響いたのには驚かされた。
また、この曲の聴かせどころの一つは派手な重音トレモロを使った第2変奏だが、岩永はこの奏法の効果をあえて強調せずスッキリと歌いあげており、この方が主題の持ち味には相応しいように思えた。
そして短調の第1変奏の途中にハーモニックスで顔を覗かせる〈埴生の宿〉の旋律、そのホッと心を和ませる美しさこそが、この曲の本当の聴かせどころなのだろうと感じ入らせてくれる。
最後は3度の重音が連続するだけの変奏だが、岩永は軽快なテンポで演奏し単調さを上手くカバーしていた。
このあと後半最初のチャイコフスキーが重く難解な作品だけに、結果的にここはシンプルな軽い締めくくりがかえって良かったと思う。

■後半最初に弾かれたチャイコフスキーの組曲は、その作曲者名から連想するようなロマンティックなメロディーが現れることはなく、タイトルの無伴奏チェロからイメージするバッハの影もない。
調性は失われていないものの、終始、不安やいらだち、闇の深淵から聴こえてくるような語らいが全体を覆う。
〈前奏曲〉のうねるような流れに混入する怒りのような装飾、〈マーチ〉に現れるつんのめるようなリズム、〈アリア〉の歌というより告白のような孤独な語り口、唯一明るい軽快な〈カプリッチョ〉が撒き散らすデーモニッシュな笑い。
そして〈アリア〉と〈前奏曲〉の曲調を、順序をさかのぼって短く再現するような〈間奏曲とコーダ〉の謎めいた構成。
岩永はこれらを完璧な技巧、明確な主張と作品への共感をもって表現した。
動きの速い曲では音の粒立ちの良さを、緩やかな楽章では減衰する余韻とその後の静寂の美しさを。
いずれもチェロでは表せない響きに、ギターの特性が上手く生かされていた。
そして他のギタリストが弾けば、よくわからない音楽に終わったかもしれないこの作品を通して、単なるメロディーの美しさやリズムの心地よさだけではない、音楽がもつその世界の深さをあらためて教えてくれる。
個人的にそうは思わないが、当日のプログラム解説者が書いていた、当時のソヴィエト社会主義体制への無言の反発・皮肉をこの曲に感じようとするのも、一つの楽しみ方ではあろう。
誰もが一聴してその面白さに馴染める作品ではないが、それだけにぜひ再演を繰り返して欲しいものである。

■岩永がシベリウスとともに、今回のプログラムで最も力を入れたであろうチャイコフスキーとは対象的に、このあとは親しみやすい民族音楽(ケルトとスペイン)に根ざした、誰もが楽しめるような作品が並べられた。
岩永はメロディックな曲において、ときに激しいビブラートをともなうオペラ歌手のような歌いあげを駆使する。
それは他のギタリストにはない、この人の演奏の魅力の一つであるが、ここの2つのスコットランド民謡にそれは控えられ、旋律はしみじみとした憧憬をもって、あくまでしっとりと歌われる。
2曲の間に挟んだ軽快な舞曲(アイルランドのジーグ)でも野卑な激しさはなく、躍動感の中にもほどよい品の良さが保たれる。
このあたり、スコットランド、アイルランド、そしてイギリスもケルト文化残存の地ということで、当夜冒頭に演奏されたダウランドの響きと表現に共通する、清々しいものを感じた。

■プログラム最後にはスペインのギタリスト、デラマーサがフラメンコ音楽をベースに作曲した2曲が置かれた。
前のケルト音楽の上品な清冽さとは打って変わり、アラブやヒターノの東洋的色合いを混じえた土の匂いが香る作品である。
悲哀の歌〈ペテネーラ〉での岩永の演奏は、この曲に素朴なギターのつま弾きを求める人には立派すぎる響きかもしれない。
ここでも管弦オーケストラや大平原の広がりを思わせるスケール豊かなもの。
〈ロンデーニャ〉は華やかなテクニックと情熱的な歌によって人気の高い作品だけに、これまでも優れた演奏の数々を聴いた。
しかし岩永の〈ロンデーニャ〉はそれらを凌駕する。
それは10弦ギターの特性ということもあるかもしれないが、やはり岩永の音楽がギターという楽器の範疇にとどまっていないからだと思う。
ギターは小さなオーケストラなどと言われるが、岩永のギターは決して小さなオーケストラではなく、オーケストラそのもの、いや、ラスゲアードなどオーケストラでは出せない響きを駆使し、オーケストラという集団では出せない“個”が持つ突き詰めた迫力を聴かせてくれるという点では、オーケストラをも凌いでいるのではないだろうか。
アンコールで、ケルト系音楽ではもっとも広く知られる〈ダニーボーイ〉に続いて弾かれた、オーケストラ原曲のファリャ〈粉屋の踊り〉ではそのことをさらに強く思わせられた。
今回のプログラムはそれぞれの作品の性格から、自然な表現と抑制のコントロールが効き、岩永ならではの“爆演”は抑えられていたのだが、最後アンコールのファリャでそれが爆発し、リサイタルは締めくくられた。
堂々たる構築感と激しいかき鳴らし、そしてたたみ込むようなエンディング。
すべての聴衆が興奮し、熱狂したことは言うまでもないだろう。


                            槇原 修 (音楽評論家)





■アンケート

●素晴らしいです!もっと聴きたい!主題と変奏のシベリウス最高!

●組曲ニ短調は変化に富んで素晴らしかった!ペテネーラ・ロンデーニャも情熱的で感動した。アンコールも良かった!全体的に素晴らしかった。

●サントルソーラのプレリュードはメロディーがキレイ!ペテネーラはギターテクが分かりやすく面白かった。とても素敵なコンサートでした。

●心が洗われて美しい音楽に感動しました。シベリウスの組曲ニ短調はご自身の編曲とは素晴らしい。ウォルシンガムに行った時は宮廷音楽にその時代にタイムスリップしたように感じられて心地よい感動に包まれました。

●埴生の宿による主題と変奏、アメージング・グレイスは旋律に馴染みがあって良かった。
旅情のようなものが感じられてよかった。もう少し演奏を聴けるチャンスが増える事を希望します。

●B. チャイコフスキーの組曲ニ短調は不協和音や思いもよらない音の飛び方など、不安感や幻想のような初めて味わう感じだった。超絶技巧曲に編曲されて素晴らしかった。
ペテネーラ・ロンデーニャは目をつぶると踊り子が激しく自由にギターの横で踊っているように感じた。情熱的で感動した。

●素晴らしい演奏だった。ダイナミックな響きや柔らかいメロディーがホールに響きとても心地よい一時を過ごせた。アイルランド民謡がとても楽しかった。(岩永さんも笑顔の演奏だった)ほぼ、知らない曲ばかりではあったが、とても楽しめた。贅沢な気分だ。

●ギターのみのリサイタルをほとんど経験が無かったので新鮮に感じました。
アメージング グレイスは馴染み深い曲をギターソロで聴けて印象に残った。
アンコール曲の二曲(ロンドンデリーの歌、粉屋の踊り)最後まで巧みな指使いが見事で感動した。

●全部凄い!何でも良いCD 出して!!

●B. チャイコフスキー、組曲ニ短調は、今までに無い響き旋律に引き込まれました。
いつもスケールの大きな演奏で毎回楽しみにしています。

●初めてギターリサイタルに来ました。こんなに素晴らしいとは思いませんでした。
組曲ニ短調のチャイコフスキーの曲がギターで演奏されると別の曲のように感じびっくりし感動しました。アンコールのダニーボーイ(ロンドンデリーの歌)心癒やされました。

ほか多数

 


■新聞・雑誌記事



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