11月24日、秋晴れの東京で岩永さんのリサイタルが行われた。オープニングは「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」から5曲。心地よい10弦ギターの響きに身を委ねていると、あっという間に終わってしまった。続くグラニャーニの序曲は、今日あまり取り上げられることはない。プログラムには「もっと弾かれてよい作品である」とあるが、趣味でギターを弾いている人にとってはちょっと難しい曲だろう。
前半のメインは何といっても、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ2番。この曲は2楽章に長大なフーガを配する。長い。ひたすら長い。このフーガはどのヴァイオリニストの演奏で聞いても長いと感じる。このフーガを長く感じさせない演奏は、筆者の知る限り、レオンハルトがチェンバロで演奏したものと岩永さんの演奏ぐらいだ。
ファイナルはディアンスのサウダージ3番。岩永さんがディアンスを弾くのは初めて聴く。一体どんな演奏になるのだろうと期待に胸が膨らんだが、聴いてみて「なるほどな」と思った。聞きなじんだサウダージの旋律が格調高く聞こえる。
個人的に、この日一番面白いと思ったのは、シベリウスの「主題と変奏」と「孤独な松の木」「道化芝居」だ。シベリウスはフィンランディアや交響曲第2番を除けば、日本ではどちらかと言えばあまりなじみのある作曲家ではない。もちろん、ギター・ソロで弾かれる曲など、他で聞いたことはない。「主題と変奏」は原曲が無伴奏チェロのための曲で、あとの2曲はピアノ・ソロの曲だが、いずれもまるでギター・ソロのために書かれた曲のようだ。岩永さんの選曲眼、編曲技術、そして高い演奏技術のなせる業だろう。10弦ギターの豊かな響きがホール全体を包み込む。聴いているうちに、以前岩永さんが弾いた、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」を思い出した。あのときも、まるでサン=サーンスがギターのために書いたようだと思った — そんな風に回想に浸っていると、アンコールの2曲目は「動物の謝肉祭」から「ライオンの行進曲」だった。ラッキー!
甲田純生

